日本で2番目に建てられた超高層ビル
「世界貿易センタービル」(東京・浜松町)。
国内でも過去に例がない規模の解体工事には、
機械のプロフェッショナルとして、
KMEメンバーが参画しています。
KMEは新工法の開発段階から携わり、
画期的な新技術を実現に導きました。
プロジェクトは駅前の人通りの多い場所のため、安全かつ効率的に解体を進めることが最重要課題でした。そこで、ビルの床や柱・梁などを「切って・吊って・下ろす」を機械で合理化する「鹿島スラッシュカット工法®」を新しく開発しました。
門野次長は、床コンクリートを切断するスラブカッター開発の機電担当です。既存の機械を改良し、カッターの回転角度を調整した「斜め切断カッター」を開発し、バッテリー駆動化なども行いました。また、コンクリート切断時に発生する切断水を再利用することで産業廃棄物と水の使用量も削減できるというエコ仕様。門野次長は、実証実験と改良を重ね、配置計画の検討なども手がけました。
この現場では、解体された大きなコンクリートブロックを安定して運び出す「4点自動吊上げ装置」も初めて導入されました。斜め切断カッターや吊上げ装置の開発にあたって、現場と社内の橋渡し役として活躍したのが当時入社2年目だった川崎職員です。門野次長の指導を仰ぎながら、発注者である鹿島建設の要望や、現場で機械を操作する職人の方の意見をヒアリングし、KMEの製造部門と相談して仕様をまとめました。川崎職員は、現場で吊上げ装置を使用する際にも立ち会い、「小さな違和感を見逃すと大きなトラブルになりかねないので、不具合を見つけたら自主的に原因究明に取り組んでいました」。これは、何かあればすぐ現場に駆け付けて細やかに対応する先輩の働き方を見て、良い影響を受けたからだと言います。現在は、関西のプロジェクトで計画業務を担当している川崎職員。この現場で、計画から現場までの流れを理解し、建設プロジェクトに関わる人々とのコミュニケーションの取り方を学んだ経験がとても役に立っているそうです。上司や先輩から学べる環境も、自身のモチベーションアップと成長につながりました。
建設現場の機械は、自動車などの既製品と異なり、現場で運用しながらアップデートさせていけるのが特徴です。門野次長は、斜め切断カッターを現場に導入した後も改良を重ねるなど、さまざまな機械をブラッシュアップしました。「アイデアに年齢・経験は関係ありません。若手の提案が採用されるチャンスもあります」と門野次長。
世界貿易センタービルに導入された斜め切断カッターや吊上げ装置などの機械は現場のニーズに特化した新技術ですが、超高層ビルの工事では一般的に、人や資材を運ぶタワークレーンや工事用エレベータなどの大型機械が使われており、現場を稼働させるために必須となっています。それを支援するのが、KMEの機電スタッフ。これらの機械の現場配置を検討する「配置計画」をはじめ、運用・管理や、設備・点検者との打ち合わせ、工程調整などを行います。また、現場を動かすための電気量算出、必要な電気を供給するための受電計画立案も担当しています。機電スタッフは、現場における重要な一員であり、機電スタッフがいないと現場が動かないともいえる、不可欠なポジションなのです。
KMEは土木分野で多数実績をもっていますが、都心を中心とした建築現場でのニーズ増大を受けて、建築分野を重点的に強化し、業務拡大を図っているところです。土木・建築は社会インフラを担う分野であり、そのなかでも機電スタッフは引く手あまたで、キャリアを積めば積むほど活躍のフィールドが広がっていきます。
機械工学を専攻していた中村職員は、当初、建設業志望ではなかったものの、「現場見学で鉄骨の上を歩いた瞬間、『すごい!』とワクワクした」のがきっかけでKMEに入社。機械の知識を建築プロジェクトに活かしています。
門野次長は長年にわたり、建築現場にかかわってきたベテランで、これまでの経験を活かして後進の育成に力を入れています。門野次長のサポートを受けながら、中村職員はクレーンの配置・組立・解体の計画やコスト算出を担当。現地にも足を運び、自分の計画したクレーンがきちんと組み立てられ、安全に作業されているかどうか、役割を終えて無事に解体・搬出されるまで責任をもって行っています。
経験工学ともいわれる建設業界。ポータブルスキルとして資格を持つことはキャリア形成においても重要です。社内には、機電スタッフには欠かせない機械系・電気系の資格をはじめ、土木や建築の施工管理技士の資格保有者もいます。資格取得のサポートが手厚いKMEでは、業務に必要な資格を自主的に勉強する社風があります。
「タワークレーンの組み立て・修理はもちろん、いざとなれば運転もできますよ」とほほ笑む門野次長、現場で計画するタワークレーンの仕組みを理解するため、オペレーターの資格を保有しています。
視野を広く持つことで、仕事の領域を広げ、次のイノベーションにもつなげられることを実践してきた門野次長のように、川崎職員は先輩にサポートしてもらいつつ電気工事士の資格を、2年目の中村職員も一級建築士という目標に向かってまい進中です。建設の現場を支える機電スタッフとして、未来に向かって着々と歩みを進めています。